第三回レジュメ・補足&コメント集

ジェンダー  斉藤第3回レジュメ          2006年5月29日

ウーマンリブ運動は、日本社会を変えたか?

・ 「ウーマンリブ」はメディアに叩かれて終わったと言われる。しかし、その主張の多くは今の私達にはあたり前として受け入れられていることが多い。

1.ウーマンリブ運動とは   
・ 時代背景:1970年頃の日本社会と学生、社会運動
・ 新聞・雑誌記事
・ 『ルッキング・フォー・フミコ』(栗原奈々子監督)



2.ウーマンリブ運動の思想と行動
資料は、『資料・日本ウーマンリブ史』1-3巻(溝口明代・佐伯洋子・三木草子編・松香堂)より。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4879749214/qid=1149132559/sr=8-1/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl/250-3073010-1026611参照。


   1)恋愛・結婚・セクシュアリティへの疑問
      ・恋愛と性別役割分業:「男たちに」
 ・結婚と妊娠・出産・中絶の関係:「中絶と出産」
 ・一夫一婦制度(異性愛制度)への疑問:「便所からの解放」
 ・社会で誉められる母性:「母の日なんてアッハッハ」
     
   2)メディア、政治など社会のしくみへの批判


   3)個人的なことは社会的なこと→学問の問い直しへ
・リブから始まったジェンダー研究:自分が問題と思うことを学問
    にし、学問自体の問い直しへ
・ 個人的なことは政治的なことである(The personal is political.)
      私的領域のこと(性暴力、セクハラ、DVなど)も学問・研究対象に

第二回コメント集

  1. 5月22日分にいただいたコメントや質問を書いていきます。書き込むのが遅れててスミマセン(緑色が斉藤です)。

レズビアン、トランス

  • 駒尺喜美さんの文章はとてもおもしろく興味深かった。女二人の共同生活を40年続けていたからといってレズビアンかどうかという考えをもつのはおかしいし、おかまで芸能界で売れているのに、その逆は少なかったりするするのはおかしいと思った。
  • 性同一性障害と”オナベ”や”おかま”はどう違うのか分からなくて知りたいと思いました。
  • 他にも、用語の意味がわからないという声が多かったので一言。授業でこのような言葉がでたのは『新宿ボーイズ』で彼女らが自称していたからだったことをお忘れなく。)
  • 性同一性障害トランスセクシュアルトランスジェンダーに関する用語集です。http://www.tnjapan.com/data/term.htm

オカマ,オナベ:「オカマ」は女装した男性や男らしくない男性に対する俗称だが、男性同性愛に対して用いられることも多い。差別的な意味あいを強く含むため、当事者が自分に向けられて不快に思うことが多い。「オナベ」は同様に男装した女性や女らしくない女性に対して用いられる言葉である。

「おかま」という言葉の語源は、江戸時代までさかのぼります。男性を好む男性が集まる『陰間茶屋』(かげま茶屋)と呼ばれる場所があって、その「かげま茶屋」が年月とともにどんどん変化し、現在の「おかま」という言葉になったと言う説があるそうですよ。
また、「おなべ」ですが、これは本来の調理器具において もよく「なべかま」という風にセットで言われる事がありますよね。 「おかま」と対になる存在、という事で「おなべ」が使われるようになったらしいです。

  • 中村美亜さんがトランスジェンダー体験を語っているサイト。ご参考に。http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2005-11/ss0511-2.htm
  • 実は、前回の授業では、全く未知の世界というか、ほとんど考えたことのなかった事実(セックス、ジェンダー、性、セクシュアリティレズビアン、ゲイなど)をまのあたりにし、驚いたのが正直な感想というか、気持ちだったのだが、今回さらに、その驚きが深まったというか、やはりよく分からないのが正直な気持ちだ。わたしが20年間生きてきて一体、性、ジェンダー、セックスって何なのだろう。同性愛って何?考えれば考えるほどわからなくなる。。知識が少ないからか、実際答えはないからなのか、、、実はとても身近で自分に関わるテーマなのに触れること自体少なかった。それもこれも性やセックスを日本文化が避けようとしていたからかもしれない。私達がこの性にまつわる事柄を考え直す時期なのかもしれない。

■レイプ(松浦理恵子さんの「嘲笑せよ、強姦者は女を侮辱できない」(『日本のフェミニズム』について)

  • 松浦理英子さんの考えは強姦者を逆に野放しにすることになるのでは?
  • レイプに関して、一般に男性が女性に対して強姦することを言いますが、では、同性愛者の場合、だ安静が男性へ、女性が女性へ性交渉を強要することを「レイプ」と言えるのでしょうか。特に、女性が女性に対することには、「レイプ」という言葉は当てはまるのでしょうか。
  • 「レイプ」は刑法の「強姦」よりもう少し広い定義で使われているように思います。が、刑法では、強姦を以下としていますので、女性同士の場合は強姦には該当せず、強制わいせつとみなされるようです。「第177条(強姦)暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫(かんいん)した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」
  • レイプについて女性はどう考えているのでしょうか?
    • いくつかのコメントを紹介します。参考にしてください。
  • レイプされて、傷ついてそれでも”女はへこたれない”とは絶対に言えないなあと思った。男の人は女がこわがるのを見て喜ぶけど、へこたれないと言ってもレイプはなくらないと思う。この作者は強いなあと思った。
  • 女性を性の商品にする人々は本当に許せないし、そのようなことをする人こそが性の弱者なのではないか。
  • 今までレイプのニュースを聞いて、なんでそんなことをするのだろうと思っていた。だけど、資料を読んで、レイプする男の人は、そういう行為でしか自分に自信をもてない人。そうじゃないと女性に勝てないと思っている考えの幼いかわいそうな人なんじゃないかと思った。そして被害にあった女性はかわいそうだし、わたしもされたら絶対イヤだけど、そこでへこたれないという気持ちがそのような犯罪をなくすんだと知って、納得した。

■その他

  • 国によって性のあり方は違っていて、私達が当たり前のことだと思っていることも実は最近つくられた物が多いと知って驚いた。そう考えていくと性別というものは元もと存在しておらず、人々が自分とまわりの人との身体的差異に説明づけようとしたり、社会の秩序を保つため「ある設定」のようなものを作っただけのような気がした。
  • sexは愛の一つの表現と考え、高校生、大学生もsex をしているが、あまり賛成はしがたい。わたしもこれまで数人の人とつきあったが、どうしても納得できないため、sexしたことがない。時代遅れだと考えられると思うだろうが、わたしは逆に”時代遅れ”と考えることが納得できない。
  • 確かに現在性交を誇大に扱いすぎているように感じました。わたしも性交は、そんなに重視すべきものではないと思います。けして軽い気持ち、という意味ではなく、人と関わっていく、つきあっていく上で、性交の必要性を感じないからです。現在、恋愛の話には、かならずといってよいほど、性交が関わってくる(連想させる)流れがあることは疑問を持たずにはいられません。
  • プリントの内容が大変興味深いためしっかり読んでみたいです。ジェンダー論が女性の味方というイメージ強いですが、主観的にも客観的にも考えて、過去の問題を考え直してみたいです。
  • 自分の知識がひっくり返されたような授業でした。性と生について、出家について、母性について、、、、ジェンダーにカンするいろいろな話を聞けておもしろかったです。
  • 神道では、女性を巫女として崇めますが、どのような経緯でそうなったのでしょうか。
  • 巫女については、まだ調べられてません。どなたかサイトなどご教示ください。

第二回授業レジュメ

                     2006年5月22日

ジェンダー理論・ジェンダー研究――日本の文献から

1) 日本でのセクシュアリティを含めた性に関する流れ(特に1990年代以降の急激な変化)

2) 日本語における性、性欲、エッチという概念の歴史と社会背景

3) レイプについてのとらえ返し

4) 母性と天皇制 

5) 仏教と性差別

6) 学問への影響(学問の男性中心主義の問い直し )


 ■ジェンダー理論・ジェンダー研究において重要なこと
1. 社会・文化的構築性(多様な性のありようと二つに分割すること)

2. 性による非対称な階層性との関わり

3. 民族、階級、年齢、宗教、セクシュアリティ、障害など他の階層秩序との連動

4. 男、女という個人的な次元にとどまるのではなく、社会全体のありように関わること

5. フェミニズム運動との関わりが強いこと

(文献抜粋7点は省略。添付文献は、伏見憲明『性の倫理学朝日新聞社、ならびに井上輝子・上野千鶴子江原由美子・天野正子編1994-95『日本のフェミニズム』全7冊別冊1,岩波書店(1『リブとフェミニズム』2『フェミニズム理論』3『性役割』4『権力と労働』5『母性』6『セクシュアリティ』7『表現とメディア』別冊『男性学』)から抜粋しました。)
なお、伏見氏のサイトは右です。いろいろなエッセーなど読めます。
http://www.pot.co.jp/fushimi/


今日もおおむね熱心に聞き、熱心なコメントが寄せられました。ただし、一部に雑談でまわりに迷惑をかけていた学生がいたようです。「うるさかったです。出ていってほしいと思いました」という怒りの声が複数あがってました。来週、注意しなきゃまずいようです。心当たりのある人は気をつけるように!
コメントは追ってかき込みます。

性同一性障害の小学2年生

  • おとなり日記からたどったのですが、兵庫県の小学2年の男児(7)が心の性と体の性が一致しない性同一性障害と診断され、小学校が男児を入学時から女児として受け入れ、通常の学校生活を 送っているということがさまざまなメディアでどのように報道されているかを載せておられました。読んでみて下さい。d.hatena.ne.jp/annojo/20060519:title=Anno Job Log]

  • 第二回も性(sex,gender,sexuality)についてさらに考えてもらう内容になりますよ。

『オッパイをとったカレシ。』

  • 『オッパイをとったカレシ。』(芹沢由紀子)このマンガはオススメです。子どもの時から「女じゃない、男だ」と悩み、苦しんできたハルカ。いろんな女の子と出会い、傷つきながらも最後は信頼できる相手をみつけお母さんともわかりあえる。『新宿ボーイズ』を見終わってもっと知りたいという人にはぜひ。

追加情報

トランスジェンダーに関心ある方へ 関連サイトをあげておきます。

http://www.geocities.co.jp/MusicStar/9962/tg/index.html
トランスジェンダーなページ
トランスジェンダー」ということばにすくわれたという著者が書いているサイトです。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%B9%A5%B8%A5%A7%A5%F3%A5%C0%A1%BC
はてなダイアリー トランスジェンダー
トランスジェンダーに関する話題にアクセスできます。

http://transgender.jp/
トランスジェンダー・ジャパンは現在工事中みたい。

また、単行本については以下をあげておきます。オナベバーについても書かれていますよ。このほかに読んでよかったものがあれば、コメント欄ででも教えてくださいね。
・松尾寿子『トランスジェンダリズム――性別の彼岸 性を越境する人びと』世織書房

追記:第一回のレジュメをあげておきます。

ジェンダー 斉藤第一回 2006・5・15
ジェンダー」概念

担当回と内容:ジェンダー理論編(ジェンダー理論 海外&日本、日本のウーマンリブ運動5/15,22,29) 
       メディアとジェンダー (6/12.19)
理論編での基本的考え方:「ジェンダー」概念とは、本来、多様である性のありようを、特に日本では、男/女と2つに分割(差異化)する概念でもある。多様な性のありようを「ジェンダー」「セックス」「セクシュアリティ」などの意味と関連性について考えよう。

ジェンダー」概念の背景
1. 日本語の「性」:英語のsex(生物学的性),gender(社会的性),sexuality(性的指向を含めた性現象)を包含する概念。日本語に英語のgenderに該当する語彙はない 
2.英語のgender はいつ、なぜ導入されたか
3. 日本語の「ジェンダー」はいつどのように導入されたか                                                                                                                                                           

ジェンダー」概念と問題点
1.「ジェンダー(社会的性)」と「セックス(生物学的性)「セクシュアリティ性的指向を含めた性現象)」のありようやその関わりはどうか(ドキュメンタリー『新宿ボーイズ』)
2.なぜ、ジェンダー(社会的な性のありよう)をとらえることが難しいか(アン・ファウストスターリング『ジェンダーの神話』)

 なお、質問やコメントを書き込むために、授業用のサイト「ジェンダーを考える」(はてなブログ)を開設しました。どうぞ気軽にかき込み下さい。資料や資料サイトを書き込むので見ておいて下さい。
 http://d.hatena.ne.jp/msmsaito/ 「ジェンダーを考える」(はてなブログ

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新宿ボーイズに関する補足資料(英語ナレーションなので少しわかりづらいかも・・)

登場人物のセックス、ジェンダーセクシュアリティに注目し、『新宿ボーイズ』をみる

■登場人物とsex,gender,sexuality
GAISHI (ガイシ):sex 女、gender男、sexuality
TATSU(タツ):sex女、gender男、sexuality 女性と同棲中。しかし、女性同士としての性行為ではない。
KAZUKI(カズキ):sex女、gender男、sexuality ニューハーフ*のくみと結婚(?)しかし、クミは生殖器をとっており、「挿入」はない
 社会的な性を「男性」として生きることを決意した女性たち。ただ、外見の「男性性」については、ホルモン注射をする人からそこまでしない人までさまざま。子どもの時から「女」であることに違和感を持ち、「男」であると思っている場合もあるし、それほどではなく「女」として生きることへの違和などさまざま。
 しかし、共通するのは、「男」として生きることを選択したこと、しかしその理由は同性愛に生きるためではないということだ。セクシュアリティの問題で「男」として生きるのではない。その証拠に彼らの性的指向は各人さまざまだ。
■キム・ロンジノットについての参照サイト:
 http://ja.wikipedia.org/wiki/キム・ロンジノット
 http://www.channel4.com/fourdocs/people/kim_longinotto.html(生のインタビューが聴ける)

ニューハーフ:女装した男性あるいは性転換した元男性を指し、特に接客業(ホステス)、性風俗産業、ショービジネス等に従事している人達。
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